子供の護身術

昨今では、子供が思わぬ事件・事故に巻き込まれたりするようなニュースが、飛び込んできます。
さまざまな状況に応じられる判断力と、基礎的な体力の向上、身をまもる技術など、楽しみながら身につけられるよう、日々の稽古では工夫して指導しています。
「合気道」と聞くと、「護身術!」というイメージをお持ちの方も多いようです。
しかし現実的に子供の護身術というものは、かなり難しく、現実的ではありません。
現実的な子供の護身ということを考えるとき、最も必要なことは、
- さまざまな変化に気づくこと
- 機転が利くこと
- 臨機応変に対応できること
- 想像力を働かせること
- 恐れを知ること
- 基礎的な体力があること
こうしたことが、護身術…という技術的なことよりも、大切なことだと考えています。
子供を犯罪から守るための防犯標語として、子供たちも学校の避難訓練などで教わって、保護者の方もお聞きになったことがあるかも知れません。

「いかのおすし」とは…
- 知らない人に、ついて「いか」ない。
- 知らない人の車に「の」らない。
- こわいときは「お」お声を出す。
- その場から「す」ぐ逃げる。
- 近くの大人に「し」らせる。
変化に気づくこと
「おや?前から来る人は、なにか雰囲気が違うぞ」
「この道は、なんとなく歩くのいやだなぁ」
…と、日常の些細なことであっても、「ん?なにか違うぞ!」と、さまざまな変化、波長の違いを感じる力は、とても大切です。
「人生の機微(きび)を感じる」
「人情の機微に触れる」
「感情の機微」
「季節の機微」
「機微」とは、表面だけでは知ることのできない、微妙なおもむきや繊細な心の動き、あるいはちょっとした変化や微(かす)かな動きのことを言いますが、こうした感覚は、人間にとってひじょうに大事な感性です。
武道とは、そうした機微をとらえる稽古ともいえるのです。
機転がきくこと 臨機応変に対応すること
これも武道においては非常に大切な感性です。
「思い込み」というものは、危険なものです。
「こうだ」と決めてかかると、視野がせまくなり、想定外の出来事への対応が遅くなります。
機転をきかせるには、その場の状況を正確にとらえる観察力が必要です。そして相手の立場に立つ想像力と配慮も必要です。そしてそれを躊躇なく行動に移せる判断力と、実行力が必要になります。
その場の状況を的確にとらえ、臨機応変に適切な判断と行動がとれる。これはまさに護身術であり、武道そのものです。
武道には「居(い)つく」あるいは「居つき」という戒めの教えがあります。
「居つく」とは、その場に居付いて動けなくなってしまうことです。つまり相手に打ち込まれたり、攻め込まれたりしたときに「あ、あ、あ…」と思いながらも、体がすくんで動けなくなってしまうことです。
動けない、動かないよりも、いざというときには動かないといけません。
最近、子供たちを指導していて思うのは、失敗を恐れて、動かない(動けない)、やらない子が多いということに気づきます。
やるまえから「できない!」「ムリ!」「わからない!」「知らない!」ときっぱり言ってやらない子が多いのです。それは失敗したくないから、失敗して恥ずかしい思いをしたくないから…という、ここにも失敗に弱い性質が見え隠れするのです。
やりもしないで「できない」と言わない。考えもしないで「わからない」と言わない。そんな子供になってほしいものです。
想像力を働かせること
こうしたら、こうなるだろう。こんなことをしたら、こんなことになってしまう。
そういう想像力が働くことも、非常に大切なことです。
夢を持つことも大切ですが、現実的な想像力を働かせることができないと、まず何からやれば良いか…ということがわかりません。映画やアニメ、あるいはゲームの世界では、主人公(自分)がいくら敵に攻撃されても、現実に痛い思いをするわけではありませんし、血を流して命を落とすこともありません。ゲームならリセットして、またライフ(命)を回復すれば生き返ります。
しかし現実には、命は一度なくなったら戻ってはこないのです。こんなことは当たり前のことですが、子供たちが見ている映像や、毎日遊んでいるゲームの世界は、非現実の世界なのに、実にリアルで、本物と見まがうほど精巧にできています。
そんな毎日のなかで、われわれが道場で稽古をしているのは、実にアナログな世界で、AIに取って代わることことのできないものです。
絞め技をすれば痛いのが現実ですし、受身に失敗すれば、擦り傷やアザになることもあります。そうしたリアルの世界が、現代においては非常に貴重な経験と言うこともできるのです。
恐れを知ること
「恐いものがある」「身近に恐い人がいる」そうした感覚も、子供たちにとっては大切なことです。
それは前述した想像力を働かせることに似ていることかも知れません。
また日常生活の基本、社会に出て困らない礼儀や習慣を身につけるよう具体的には次のようなことを指導しています。
基礎的な体力があること
どんなに、変化を察知する感性があっても、恐くて大きな声を出すことができても、最後は行動に移す体力、そして危険なことから逃げる体力がなければ、話になりません。
追いかけたり逃げたりする「鬼ごっこ」をして遊んでいる子供を、公園で見ることが少なくなりました。子供たちが「遊ぶ」と言えば、ゲームをするか、スマホで動画をみるか・・・
体を動かす機会は、学校の体育の時間くらい・・・これでは体力がつくはずはありません。
基礎的な体力がないために、少し動いただけでも疲れる、ケガをする子が多いのです。
まず全身を使って、たくさん動くことからはじめることです。


